業務委託の確定申告、源泉徴収なしの人がつまずく3つのところ
対象年度:令和8年分(2027年2〜3月に申告する分) 更新日:2026/09/30
書いた人:業務委託と自営サロンを両立するセラピスト・理学療法士 たたら
業務委託の報酬から源泉徴収されていないなら、その報酬にかかる所得税は、まだ1円も納めていない状態です。だから、確定申告で1年分をまとめて計算し、自分で納めます。
売上から経費を引いた「所得」が、基礎控除などの控除の合計を超えるなら、所得税の確定申告が必要です。所得税がかからない額でも、住民税の申告は必要になることがあります。
私も温浴施設のリラクゼーション部門で業務委託として働いていて、報酬は振込で、源泉徴収はされていません。この記事では、制度の説明と、私が実際にやったことを分けて書きます。
源泉徴収なしとはどういう状態か
源泉徴収は「決まった報酬だけ」の仕組み
源泉徴収とは、お金を支払う側が、報酬から所得税を先に差し引いて国に納める仕組みです。会社員の給与の天引きと同じ考え方です。
ただし、個人への報酬で源泉徴収が必要なのは、法律で決まった種類だけです。原稿料や講演料、弁護士・税理士などの資格者への報酬、モデルや外交員への報酬などが対象です(出典:国税庁 No.2792)。
リラクゼーションの施術報酬は、この一覧に入っていません。そのため、業務委託のセラピストは源泉徴収なしで報酬を受け取るのが一般的です。
ただ、講習の指導料など、同じ店からでも中身によっては対象になる報酬もあります。自分の報酬がどちらかは、支払明細や振込額で確かめるのが確実です。
源泉徴収されないのは違法ではない
「源泉徴収をしていません」と言われると、お店が何かをごまかしているように感じるかもしれません。でも、対象外の報酬なら、源泉徴収しないのが正しい扱いです。お店の不正ではありません。
そのかわり、税金を計算して納めるのは受け取る側の仕事になります。会社員やアルバイトのように、勤め先が代わりに納めてくれる立場ではない、ということです。
「業務委託」でも給与として扱われることがある
契約書に「業務委託」と書いてあっても、税金の上では働き方の実態で判断されます。指示を受けて働いた対価は給与、自分の計算と責任で独立して営む仕事の収入は事業所得、というのが最高裁判所の判決(昭和56年4月24日)で示された考え方で、今もこの基準が使われています。勤務時間や作業のやり方を細かく指示される働き方は、給与に近いと見られます(出典:最高裁判所 昭和56年4月24日判決)。
医療職の業務委託で、報酬が給与として源泉徴収される例があるのはこのためです。明細に「給与」や「源泉徴収税額」とあれば、この記事の「源泉徴収なし」の話とは扱いが変わるので、支払う側に確認してください。
源泉徴収ありとの違い
違いは「税金を先に払っているか」だけです。
| 源泉徴収あり | 源泉徴収なし | |
|---|---|---|
| 受け取る額 | 報酬から約1割(10.21%)が引かれる | 報酬の全額 |
| 確定申告での扱い | 天引き分を差し引いて精算。払いすぎなら戻ってくる | 1年分の税額をまとめて納める |
| 気をつけること | 天引きの記録(支払調書など)をそろえる | 納める分のお金を残しておく |
源泉徴収なしだと、受け取る額は多く見えます。そのぶん、申告の時期にまとめて納める額が大きくなります。
なお、10.21%は源泉徴収で先に差し引く率で、所得税の税率そのものではありません(1回の支払いが100万円を超える部分は20.42%)。所得税は、所得から控除を引いた額に、5%から45%までの税率を段階的にかけて計算します(出典:国税庁 No.2260)。源泉徴収なしだからといって、報酬の1割や2割を納めるわけではありません。
たたらの場合
報酬は毎月振込で、源泉徴収はされていませんでした。この点は契約時にしっかりと説明してもらったので、契約時点から確定申告の準備を進めていました。
確定申告が必要かの目安(令和8年分)
所得は「売上−経費」
確定申告で見るのは、受け取った報酬の合計(売上)ではなく、そこから経費を引いた「所得」です。
業務委託の報酬は、帳簿をつけて保存していれば、原則として「事業所得」になります。帳簿がないと「雑所得」として扱われることがあり、青色申告の控除などが使えません(出典:国税庁 No.1500)。
基礎控除の額が令和8年分から変わった
所得税の基礎控除は、ほとんどの人が所得から差し引ける控除です。令和8年度の税制改正で引き上げられ、令和8年分は合計所得金額に応じて次のとおりです(出典:国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」)。
| 合計所得金額 | 基礎控除(令和8年分) |
|---|---|
| 489万円以下 | 104万円 |
| 489万円超〜655万円以下 | 67万円 |
| 655万円超〜2,350万円以下 | 62万円 |
実際には、国民健康保険料や国民年金などの控除も差し引けるので、申告が必要になる線は人によって変わります。
住民税は控除額が低い
住民税の基礎控除は43万円のままで、所得税ほど引き上げられていません。所得税がかからない所得でも、住民税はかかることがあります。
所得税の確定申告をすれば、その内容が市区町村に回るので、住民税の申告を別に出す必要はありません。所得税の申告をしない場合は、住民税の申告が必要か、お住まいの市区町村で確認してください。
勤め先から給与をもらいながら業務委託もしている人は、給与以外の所得が20万円以下なら所得税の申告が要らない場合があります(出典:国税庁 No.1900)。ただし、この場合も住民税の申告は別に必要です。詳しくは副業20万円以下でも住民税の申告が要る理由で書いています。
同じ年に給与もある人
会社を辞めてから業務委託を始めた年や、勤めながら業務委託もしている年は、給与と業務委託の報酬を1つの申告書にまとめます。勤め先の源泉徴収票と、業務委託の1年分の記録を用意します。
年の途中で退職して年末調整を受けていない給与は、申告すると給与から引かれていた税金の一部が戻ることもあります。業務委託の分と差し引きした結果で、納めるか戻るかが決まります。
源泉徴収票から申告に写すのは、支払金額(1年分の給与の額)、源泉徴収税額(給与から先に引かれた所得税)、社会保険料等の金額など、決まった欄の数字です。会計ソフトやe-Taxの入力画面は、源泉徴収票と同じ項目名で並んでいるので、名前を見比べながら写していきます。
私も、業務委託を始める前は病院に勤めていて、給与をもらっていました。そのため1年目の申告は、病院の源泉徴収票と業務委託の報酬を合わせて出しています。源泉徴収票のどの数字をどこに入れるのかは、そのつど調べながら入力しました。
源泉徴収なしの人の申告の流れ
1年分の報酬を通帳から集める
支払調書は、報酬を支払った側が「誰にいくら払ったか」をまとめて税務署に出す書類です。税務署に出すのが決まっているのは、原稿料や士業への報酬など、源泉徴収の対象とほぼ同じ種類の報酬です(出典:国税庁 No.7431)。
もともと税務署向けの書類なので、受け取る側に渡すことは義務ではありません。源泉徴収のない施術報酬なら、支払調書そのものが作られないことも多いです。
届かなくても申告は必要なので、通帳や振込の記録から1年分の報酬を自分で集めます。お店が毎月出す支払明細があれば、それも一緒に保存しておくと確かめやすくなります。
経費をまとめる
施術着や研修費、仕事のための交通費など、仕事に必要だった支出を集めます。何が経費にできるかはセラピストの経費にできるもので詳しく書いています。
青色申告か白色申告かを確認する
青色申告は、複式簿記(取引を「何に使い、どこから払ったか」の両面で記録する方法)で帳簿をつける申告です。事前に「青色申告承認申請書」を税務署に出しておく必要があります。
令和8年分では、複式簿記の帳簿をつけて期限内に出せば55万円、さらにe-Taxで出すなどの条件を満たせば65万円を所得から差し引けます(出典:国税庁 No.2072)。令和9年分からは控除の区分が変わる予定なので、青色申告・控除の改正まとめで追いかけています。
申告書を作って出す
令和8年分の申告期間は、2027年2月16日から3月15日までです。e-Tax(国税庁のネット申告)なら、税務署に行かずに家から出せます。
期限までに納める
納める期限も3月15日です。口座からの引き落とし(振替納税)を選ぶと、引き落としは4月ごろになります。源泉徴収なしの人は、この1回で1年分を納めるので、報酬の中から税金の分を分けておくと慌てずにすみます。
たたらの場合
私は青色申告で、マネーフォワード クラウド確定申告を使い、e-Taxで出しました。個人事業主として働くことが決まった時点で、開業届を準備しており、その最中に青色申告承認申請書の存在を知ったので、ほぼ同時期に提出しています。
ふだんの作業は、月に1回、マネーフォワードに連携している口座とカードの明細を仕分けするだけです。事業に使っているのは連携している口座とカードだけにしているので、それ以外の記録を集める手間がありません。
申告の時期に一から集めるより、月1回の仕分けで済ませる形にしたのが、いちばん楽になった点です。
帳簿づけと申告書の作成をまとめて済ませたい人は、セラピストの会計ソフトの選び方(使用記つき)で、私が使っているソフトの画面と使い分けを紹介しています。
たたらがつまずいた3つのところ
ここからは、私が業務委託1年目の申告で迷ったところです。同じところで止まる人が多いと思うので、制度の答えとあわせて書きます。
どこに何の数字を入れるか
いちばん困ったのは、金額を入れる欄がたくさんあって、どこに何の数字を入れればいいか分からなかったことです。大体はマネーフォワードの画面に出てくる順番どおりに入力し、分からない項目が出てきたら、その都度ネットで調べて進めました。
制度としては、業務委託の報酬は「事業所得(営業等)」の収入に入ります。会計ソフトを使う場合は、日々の仕訳から決算書(1年の売上と経費をまとめた書類)が作られ、その数字が申告書に自動で移ります。自分で数字を入れるのは、主に後で書く控除の欄です。
株の配当やNISA、特定口座の扱い
次に迷ったのが、株式の配当などの収益をどう扱うかでした。
NISA口座の中で出た配当や売却益は非課税なので、申告しません(出典:金融庁 NISA特設ウェブサイト)。
特定口座の「源泉徴収あり」を選んでいる場合、配当や売却益の税金は証券会社が差し引いて納めています。このため、申告しない(申告不要)を選べます(出典:国税庁「特定口座制度の概要」)。
注意したいのは、申告すると住民税でも同じ扱いになることです。令和6年度の住民税から、所得税で申告した配当などは住民税でも所得に入るようになりました(出典:神戸市「上場株式等に係る所得税と住民税(市県民税)の課税方式の統一」)。所得が増えると、国民健康保険料が上がることがあります。
一方、一般口座や特定口座の「源泉徴収なし」で出た売却益は、原則として申告が必要です。
私の場合は、NISAと特定口座(源泉徴収あり)で完結しているので、申告不要を選べます。しかし、当時はそのことを知らず、NISAを除くすべての利益を申告しました。申告したこと自体は間違いではありません。ただ、所得が増えた扱いになるので、国保や住民税が上がった可能性があります。出した後から外すこともできないので、申告する前に一度考えるのがおすすめです。
使える控除の選び方
3つ目は、どの控除が使えるのか選ぶところでした。
業務委託には年末調整がありません。会社員なら勤め先がまとめてくれる控除も、自分で申告書に入れる必要があります。
よく使うのは、国民健康保険料や国民年金保険料の社会保険料控除です。ほかに、生命保険料控除、小規模企業共済やiDeCoの掛金の控除、医療費控除などがあります(出典:国税庁 No.1100)。払った証明書が届くものは、1年分を1か所にまとめておくと入れ忘れを防げます。
私が使った控除で、はっきり覚えているのは医療費控除です。社会保険料控除は、自分では使った意識がありませんでした。でも申告書の控えを見ると、きちんと入っていました。病院の源泉徴収票やマネーフォワードの入力画面で、知らないうちに反映されていました。
社会保険料控除は、給与をもらう人だけのものではありません。業務委託でも、国民健康保険料や国民年金保険料を払っていれば使えます。私のように「使っていない」と思い込んでいる人ほど、一度控えを確かめてみてください。入れ忘れていた年があっても、申告期限から5年以内なら「更正の請求」で直せます(出典:国税庁 No.2026)。
医療費控除は、1年に払った医療費から保険などで戻った分を除き、10万円(総所得金額等が200万円未満の人はその5%)を超えたとき、その超えた分を所得から差し引ける控除です(出典:国税庁 No.1120)。病院の領収書は、1年分をまとめて保存しておきます。
申告の後に届く住民税・国保・予定納税
住民税と国民健康保険料
確定申告で出した所得をもとに、住民税と国民健康保険料が決まります。どちらも6月ごろに通知が届き、業務委託の人は自分で納めます。
所得税を納めて終わりではなく、住民税と国民健康保険料が後から来るのが、源泉徴収なしで働く人のお金の流れです。
国民健康保険料と国民年金保険料は、経費ではなく「社会保険料控除」として所得から差し引きます(出典:国税庁 No.1130)。所得税や住民税も経費にはなりません。事業用の口座から払っても問題はありませんが、帳簿では経費ではなく「事業主貸」(事業のお金を個人のために使ったという記録)で仕訳します。
2年目からの予定納税
前の年の所得をもとに計算した所得税(源泉徴収された分などを除いた額)が15万円以上だと、その年の7月と11月に、所得税の一部を前払いする「予定納税」の通知が届きます(出典:国税庁 No.1530)。
たたらの場合
申告の後に届いた住民税と国保の通知を見て、正直「高いな」と思いました。
私は税金用の口座を分けていません。そのかわり、国民年金保険料はクレジットカードで毎月自動で払い、国保は事業用の口座から引き落としにしています。払い忘れが起きない形にしておくのが、私の備え方です。
申告しないとどうなるか
申告が必要なのにしないと、本来の税金に加えて、無申告加算税や延滞税がかかることがあります(出典:国税庁 No.2024)。
住民税や国民健康保険料も正しく計算されず、後からまとめて請求されることがあります。所得の証明書が出せないため、賃貸の契約や融資の審査で困ることもあります。
源泉徴収なしの報酬は、支払う側が税務署に報告していないこともあります。それでも、通帳に入金の記録が残るので、申告しなくて済むものではありません。
まとめ
業務委託で源泉徴収なしの人は、1年分の所得税を確定申告でまとめて納めます。申告が必要かは「売上−経費」の所得と控除で決まり、令和8年分は基礎控除が引き上げられました。
申告の後には、住民税と国民健康保険料の通知が届きます。報酬を受け取った時点で、税金の分を分けておくのがいちばんの備えです。
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出典
国税庁 No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2792.htm
最高裁判所 昭和56年4月24日第二小法廷判決(民集35巻3号672頁、事業所得と給与所得の区分) 【URLを記入:裁判所の裁判例検索のページ】
国税庁 No.2260 所得税の税率 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
国税庁 No.1500 雑所得 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1500.htm
国税庁 令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について https://www.nta.go.jp/users/gensen/2026kiso/index.htm
国税庁 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm
国税庁 No.7431 「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出範囲と提出枚数等 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hotei/7431.htm
国税庁 No.2072 青色申告特別控除 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
金融庁 NISA特設ウェブサイト https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/
国税庁 特定口座制度の概要(パンフレット) https://www.nta.go.jp/users/gensen/nisa/pdf/0019009-091.pdf
神戸市 上場株式等に係る所得税と住民税(市県民税)の課税方式の統一 https://www.city.kobe.lg.jp/a83576/kurashi/tax/shikenminze/shinkokuhuyou.html
国税庁 No.1100 所得控除のあらまし https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1100.htm
国税庁 No.2026 確定申告を間違えたとき https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2026.htm
国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm
国税庁 No.1130 社会保険料控除 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1130.htm
国税庁 No.1530 予定納税 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1530.htm
国税庁 No.2024 確定申告を忘れたとき https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2024.htm